リブランディングが注目を集めています。
企業にとって、ブランディングは重要なマーケティング戦略ですが、必ずしも成功するとは限りませんし、かつてのブランディングが色褪せてしまうこともあります。
そこでリブランディングです。
リブランディングによって甦った企業は決して少なくありません。一方で、リブランディングとは何を意味するものなのか、興味はあるけどよく分かっていないという方も多いのではないでしょうか。
そこでリブランディングについて、様々な角度から解説していきましょう。
目次
リブランディングとは?
リブランディングとはブランディングを再び行うことです。
「リボース」「リファイン」などでも用いられている、「再び」を意味する「re」をブランディングに付与し、「リブランディング」と呼称されている手法は、新たなブランディングを行い、それまでのイメージを変更するものです。
リブランディングが必要な背景として、ブランディング当時からの情勢の変化により、かつてのブランディングが色褪せてしまったり、あるいは時代にマッチしていないものになっている点が挙げられます。
ブランディングは企業のイメージや戦略の根幹です。
そのブランディングが古く、時代に沿わない色褪せたものになってしまっては、顧客からも古い会社、時代に対応していない会社といったネガティブなイメージを持たれかねません。
そこでリブランディングです。
リブランディングにより、現代社会にマッチしたブランディングを行うことで、会社としてのイメージを一新できるだけではなく、時代に沿った新たなビジネス戦略を実践し、消費者に新しい会社の姿勢をアピールできます。
リブランディングの実施手順について
リブランディングを行うにあたっての手順は以下になります。
それぞれのポイントについて、解説していきましょう。
【分析フェーズ】自分たちを知ろう
まずは分析です。
リブランディングを行うためには、まずは自らの存在を客観的に把握しなければなりません。
リブランディングとは、ブランディングの再構築です。元の状態が分からなければ、再構築などできません。そもそも、再構築とは問題点の改善を意味していますので、既存ブランディングを正確に把握することが、リブランディングの一歩目です。
ここでポイントとなるのが、あくまでも客観的な現状分析が求められます。
主観的、希望的観測は不要です。
客観的な現状分析でなければ、結局は良いように解釈してしまい、問題点が浮き彫りになりません。
【戦略立案フェーズ】ブランドを目指す姿に近づけるどうすればいい?
分析した情報を元に、新たなブランディングに入ります。
ブランドの方向性、理想等を設定し、実現するためには何が必要なのかなど、具体的な戦略を立案するフェーズです。
ここでポイントとなるのが、あくまでも「改善」である点です。新規でブランディングを行うのではなく、あくまでも既存のブランディングを改善する点にあります。
つまり、これまでと同じ方法では意味がありません。
新しい目標を実現するための方法が求められますので、既存の戦略等を元に、では今後どうするのか。この点を考える必要があります。
【浸透フェーズ】ブランドのリニューアルをお知らせしよう!
新しいコンセプトや目的、さらには戦略等まである程度か固まったら周知・徹底し、浸透させるフェーズとなります。
リブランディングの場合、消費者・顧客はもちろんですが、従業員・スタッフへの徹底も大切です。いわゆるアウターブランディングとインナーブランディングの双方を実践しなければなりません。
特にポイントとなるのがアウターブランディングです。インナーブランディングも大切ではありますが、リブランディングで最もアピールしたい相手は消費者・顧客です。
一般的なブランディングの場合、あくまでも強みやコンセプトのアピールだけで良いのですが、リブランディングの場合、変わった点もアピールしなければなりません。
特にこれまでの知名度が高ければ高いほど、変更点を知ってもらわなければなりませんので、一般的なブランディングとはアピールポイントが異なります。
リブランディングの成功事例をご紹介!
リブランディングを実践し、それまでのイメージを一新して新しいイメージの構築に成功した企業がいくつかあります。
いわばリブランディングの「成功事例」となる、それらの企業をいくつかご紹介しましょう。
祇園辻利
世界的な観光地として、国内外を問わずに多くの観光客が集う街・京都に本社を構える祇園辻利は、宇治茶の販売を鎌倉時代から行っているという老舗中の老舗。
業務を拡大するなど、店舗数も多かったのですが、それぞれの店舗にて独自に表現を行っていました。例えばメニュー。達筆の店長のいる店舗であればお品書きは筆でしたが、達筆の店長がいない店舗ではラベルプリンターにて作成されたものでした。
このように、店舗間でそれぞれ独自に動いていた部分もありました。
また、祇園辻利によって展開されていた茶寮都路里に関しては、同一企業による営業だとはあまり知られていませんでした。
そこで祇園辻利はマーケティング課を設立し、リブランディングに動きました。
まず、webサイトをリニューアルすることで、暖簾を一つに見せました。
祇園辻利と都路里は同じであること、さらにはお茶を多くの人に知ってもらうというブランドコンセプトの設立に伴い、京都の寺社とも連携。そしてお茶の歴史も紹介するなど、「京都の歴史あるお茶」をブランドコンセプトに据えました。
それまでは店舗によってお茶を販売していただけでした。もちろん一応は歴史というブランディングもありましたが、お茶だけではなく、京都の歴史まで含めたリブランディングを実践したことで、京都を代表する茶屋としてのイメージを確立するに至りました。
湖池屋
1953年創業の老舗お菓子メーカー・湖池屋。
1967年に日本で初めてポテトチップを量産するなど、ポテトチップが有名な企業です。
しかし湖池屋は2016年、リブランディングを行いました。
それまでの湖池屋は、価格競争に巻き込まれたことで、どうしても安価な製品に頼らざるを得ない状況となっていました。
しかし価格競争では企業体力が削られると共に、消費動向の変化の兆しも見えていました。安い商品よりも、付加価値のあるプレミア商品の注目度が高まっていたことから、湖池屋のリブランディングは「老舗メーカー」に設定。
お菓子を安く販売する会社ではなく、老舗メーカーとして、ユーザーのニーズに応える戦略へと舵を切りました。
「老舗」という言葉の中には、安心、安全、信頼といった意味も含まれています。
湖池屋の商品を安心して、信頼して選んでもらえるようにとのことですが、リブランディングにあたっては社屋も一新。さらには企業の考えやルール等をまとめたブランドブックを制作するなど、アウターブランディング・インナーブランディングそれぞれに力を入れました。
そして製品は安さを売りにするのではなく、国産100%など素材にこだわった商品を投入することで、リブランディング以降、売上が急速に回復しただけではなく「働いてみたい注目成長企業2019」にて第1位を記録するなど企業イメージも一新されました。
ヤンマー
1913年創業の老舗重機メーカー・ヤンマー。
かつては天気予報のスポンサーを務めたこともあり、かつ世界展開しているなど、国際的な知名度を持つ企業でした。
しかし、国内では農業機械をメインに扱っていたものの、国外では船舶エンジンを扱っていました。結果、国内外にてブランドイメージが異なっていたことからリブランディングを実践。
リブランディングにて「テクノロジー×サービス×ホスピタリティ」をブランドコンセプトの軸に据えることで、最先端グローバル企業としてのイメージを打ち出していくことになりました。
リブランディングに伴い、農機や船舶のデザインも一新。古臭い、いわば「昔ながらの企業」を連想させるデザインではなく、最先端を思わせるデザインを採用することで、「農業器具を扱っている古い企業」から「高い技術を持つ最先端企業」としてのイメージが広がりつつあります。
リブラディングを成功させる方法
リブランディングは必ず成功するものではありません。
成功するか否かは、取り組み方次第です。そこでリブランディングを成功させるためには何が必要なのか、いくつかポイントをまとめてみましたのでご覧ください。
妥協せず続ける
リブランディングは成功の定義が様々です。
リブランディングによって売り上げを伸ばしたいのか、イメージを一新したいのか、認知度を広げたいのかなど、それぞれ異なるテーマに取り組むことになります。
特に数値化できない目標に関しては、成否の判断が難しいのですが、妥協せずに継続することが求められます。
むしろ途中で投げ出してしまうと、リブランディングそのものが中途半端な形で終わってしまい、一新しようとしていた企業イメージ、さらには新しくアピールしようとしていた企業イメージそれぞれが中途半端な形になってしまいます。
リブランディングに取り組むのであれば、安易に妥協することなく、効果を実感できるまで継続することが求められます。
問題点の見直し
なぜリブランディングを行うのかといえば、何らかの問題点があるからこそです。
そこで、問題点を見直しましょう。問題点をどのように改善するか、その具体的対策こそリブランディングの活動になります。
現状、どのような問題点があるのかや、新しく掲げた目標を達成するために何が足りていないのかなど、問題点を掲げ、見直すことが大切です。
客観的な視点
先にも少々触れましたが、客観的な視点も重要です。
「自分たちはこう思う」ではなく、限りなく客観的な意見を集め、改善点を見つけることがリブランディングの一歩目です。
裏を返せば、主観的な意見はリブランディングに不要です。「自社はこう思われているはず」といった根拠のない主観的な意見ほどリブランディングの邪魔になるものはありません。
客観的な意見・データに基づいてリブランディングを進めましょう。
効果が無いプロモーションを見直す
リブランディングを実践すべく、様々な形の施策・プロモーションを行うかと思いますが、効果が出ていないプロモーションに関しては適宜見直しましょう。
効果の出ていないプロモーションを継続してもリソースを無駄にするだけです。効果の期待できる、あるいはすでに効果が出ているプロモーションにリソースを割くか、新たに効果が期待できるプロモーションを新規で立案するなど、いつまでも効果の出ていないプロモーションにこだわる必要はありません。
むしろそのこだわりはリブランディングの邪魔になりかねません。いつまでも効果の出ないプロモーションを続けていても、意図していないイメージを持たれかねません。
まとめ
リブランディングに成功すると、新しいイメージを持たれることで、それまでのネガティブなイメージの払拭が可能になります。
企業にとってイメージは重要です。「実際には違う」と思っていても、すべての人間が興味を持ち、正しく把握している訳ではありません。
そして、その「正しくはないイメージ」に足を引っ張られることもあります。だからこそ、リブランディングによって新しいイメージを打ち出し、消費者のイメージを一新することで、その後の企業戦略もまた、それまでとは異なるものになることでしょう。