現在、さまざまな企業が自社ブランド製品を販売しています。自社ブランド製品は企業にメリットをもたらし、事業を大きく成長させる可能性があります。一方でデメリットも内在するため、詳しく解説します。自社ブランド製品に興味がある方は最後までご覧ください。
目次
自社ブランドとは?
自社ブランドとは、卸売業者や流通業者などが、商品の開発・企画を行い自社ブランドとして、販売している商品を指します。
一般的に卸売業者や流通業者は、開発・企画を行うことはなく、他社メーカーが製造した商品を扱うことが多いです。
しかし、近年になって自社ブランドを展開している業種が増えており、代表的な例としてはコンビニエンスストアのセブンイレブンやファミリーマートが自社ブランドを展開しています。
開発した商品の製造を他社に任せる「OEM」と呼ばれる形式で行うことがほとんどであり、ブランド商品の開発・企画を行った後、他社に委託することで商品の製造を可能にしています。
EC事業やSNSマーケティングなどのブランド戦略がビジネスモデルとして注目されており、コミュニケーションを通じて開発・企画を行いやすくなったことが、自社ブランドの開発に乗り出す企業が多い要因といえます。
自社ブランドで製品を持つメリットデメリット
自社ブランドを展開する企業が増加していますが、どのようなメリットがあるかご存じでしょうか?
自社ブランドを展開するメリットを知っておけば、効率的に企業の売上を伸ばす可能性が高いです。
また、メリットだけでなくデメリットを把握しておくと、対策の準備を事前に立てることができます。
メリット・デメリットをそれぞれしっかりと把握しておきましょう。
自社ブランドで製品を持つメリット
自社ブランドで製品を持つメリットは下記の3点です。
- 流通経路の省略や仕入れコストを削減できる
- オリジナル商品で同業他社との差別化を図れる
- 商品の生産をメーカーに委託できる
それぞれ詳しく解説します。
流通経路の省略や仕入れコストを削減できる
自社ブランドで製品を開発すると、流通経路の省略や仕入れコストの削減につながります。
従来の卸売業や流通業では、大手メーカーが製造した他社ブランドを仕入れて販売する方法が一般的です。
しかし、日本独特の流通経路によって他社ブランドを販売するまでの間、多くの場合商社や代理店を経由するため、仲介手数料や流通経路に無駄が発生します。
そのため、実際に販売される商品は発生した仲介手数料や流通経路にかかったコストを上乗せして販売されます。
一方で、自社ブランドの商品は仲介業者や代理店を通さず、開発した商品を直接販売店舗に持っていくことが可能です。
仲介手数料や商社を通さないため、流通経路の省略や仕入れコストを削減でき、商品の純利益が多くなりやすい特徴があります。
オリジナル商品で同業他社との差別化を図れる
オリジナル商品で同業他社との差別化を図れるメリットもあります。
他社メーカーのブランド製品を主に取り扱う卸売業者や流通業者では、専売契約などの特別な例を除くと同業他社も同じような商品を扱っています。
ちなみに、製造メーカーが販売しているブランド商品のことを「ナショナルブランド」とよびます。
一方で、自社ブランドの商品は同業他社に卸さないこともでき、パッケージデザインや内容物など販売数や流行に応じて変更が可能です。
同業他社が取り扱っていない商品の販売で差別化を図り、オリジナル商品を求めて来店してくる消費者を大切にビジネス展開を行うとよいでしょう。
商品の生産をメーカーに委託できる
商品の生産をメーカーに委託できる点もメリットとして挙げられます。
一般的に商品の生産には、生産設備を用意する必要があります。しかし生産設備には工場を設置する土地や設備の維持費、工場を運営するための人件費など、さまざまな初期コストがかかります。
自社ブランドとしてスタートさせるには、コストがかかりすぎてしまうといえます。
一方で、生産設備を保有している他社に生産を委託することで、生産設備などの初期コストを抑えながら自社ブランド製品の生産を行えます。
他社に生産委託した場合であっても、パッケージや内容物はある程度自由に変更できるため、初期段階ではメーカーに委託して自社ブランド製品を販売していくとよいでしょう。
自社ブランドで製品を持つデメリット
自社ブランドで製品を持つことはメリットだけではなく、デメリットもあります。
デメリットについては下記2点に注意しましょう。
- クレーム対応を行う必要がある
- 自社ブランドのため、返品や転売が不可能
それぞれ説明します。
クレーム対応を行う必要がある
クレーム対応を行う必要があるのは、自社ブランドのデメリットといえます。
ブランド製品に問題が発覚し、消費者からご意見があった場合、商品を製造した製造業者が対応を行います。
自社で保有する製造設備で自社ブランド製品を作成した場合はもちろん、他社メーカーに製造を依頼した場合でも例外ではありません。
製造業者として責任が問われる場合、消費者庁が制定している「製造物責任法(PL法ともよばれる)」2条3項各号によると以下の条件に当てはまる者が製造責任を負います。
- 製造物を業として製造、加工または輸入した者
- 製造物に製造業者として商号などを表示した者
- 製造物に製造業者と誤認される商号などを表示した者
- 製造物の製造、加工、輸入または販売の形態等から、製造物にその実質的な製造業者と認められる商号などを表示した者
自社ブランド製品を他社メーカーに製造した場合であっても、3と4の項目に該当します。
コールセンターやサポートセンターの設置を行い、不具合が生じた場合の対策を用意しておきましょう。
また、他社メーカーとの契約内容によってはクレーム対応を行ってくれる場合があるため、自社ブランド製品を委託する際は、しっかりと責任先を確認しておくようにしましょう。
自社ブランド製品のため、返品や転売が不可能
自社ブランド製品では、返品や転売が実質的に不可能となっているケースが多いです。
なぜならパッケージや自社の商品ロゴが用いられ、自社ブランドは他社に卸さない、競合他社が自社ブランド製品を卸さないとルールを作っている場合があります。
そのため、自社ブランドの商品はメーカーに返品ができなかったり、簡単に販売チャンネルを変えることができなかったりします。
転売によって在庫処分をすることが難しいため、在庫を抱えてしまった場合の管理や処分の方法を事前に考える必要があるでしょう。
自社ブランドで製品を持っている成功事例を紹介
自社ブランドで製品を持っている企業は多く、私たちの生活を支えています。
成功している企業の事例を確認することで、自社ブランド製品の販売戦略の参考にしてみましょう。
ローソンセレクト(ローソン)
株式会社ローソンの販売している「ローソンセレクト」は、自社ブランド製品です。
「普段使いの商品にはシンプルで落ち着いたものが好まれる一方、多くの商品とともに売り場に並べられるコンビニでは見分けやすさが重要」という考えの基、パッケージされた商品で成功しています。
販売当初は、自社のPB商品の認知度と売り上げを向上させるため、世界的に有名なデザイン企業を起用していました。
しかし「商品の内容物がわかりづらい」として、失敗した経緯から2020年以降現在のパッケージに変更されています。
自社ブランド製品の柔軟さを活かして、ユーザーニーズに訴求しているデザインかどうか、販売数を見ながら、ユーザーニーズを満たしているか確認しながら販売することが成功の秘訣といえるでしょう。
ファミリーマートコレクション(ファミリーマート)
株式会社ファミリーマートが販売している「ファミリーマートコレクション」も自社ブランド製品です。
ファミリーマートコレクションは、自社ブランド製品の中で「レギュラーライン」と「プラチナライン」にグレードを分けています。
また、ファミリーマートコレクションだけではなく、「お母さん食堂」という自社ブランドも展開しており、多種多様な購買層を獲得しています。
現在では、ファミリーマートコレクションとお母さん食堂は統合されており、新自社ブランド製品「ファミマル」として展開中です。
まとめ
自社ブランドとは、卸売業者や流通業者などが、商品の開発・企画を行い自社ブランドとして、販売している商品を指します。
一般的に卸売業者や流通業者は、開発・企画を行うことはなく、他社メーカーが製造した商品を扱うことが多いですが、コンビニエンスストアを始め、数々の企業が自社ブランドの展開を行っています。
自社ブランド製品を展開するメリット・デメリットは下記の通りです。
【メリット】
流通経路の省略や仕入れコストを削減できる
オリジナル商品で同業他社との差別化を図れる
商品の生産をメーカーに委託できる
【デメリット】
クレーム対応を行う必要がある
自社ブランドのため、返品や転売が不可能
ユーザーニーズにあわせたパッケージデザインを臨機応変に変更したり、購買層を幅広く獲得するために自社ブランド製品を細かく分けたりと、自社ブランド製品を成功させるための参考にしてみましょう。