委託製造は、コスト力のある製品を提供していくための効果的なビジネススタイルの1つと考えられます。委託製造は委託内容によりOEMとODMに分類することができます。それぞれの特徴などを含めて解説すると共に、委託製造を進めるうえでの注意点とOEM、OEMの今後について触れていきましょう。
目次
委託製造とは?
委託製造とは、製品を販売するメーカーが、製品のコストダウンによる利益の拡大を主たる目的として、他社に製品の生産の委託を行うことを指します。
2000年代以降、日本では様々な業界において主に、製造を委託する側としてこのビジネススタイルをよく利用してきました。委託製造は自動車、家電製品、コンピュータ、パソコンやサーバに始まり食品や衣料品に至るまで幅広い分野で利用されています。
OEMとODMの違いとは?
OEM(Original Equipment Manufacturing)とは他社ブランドのオリジナル製品の生産を行うことです。一般的にOEMを委託する側は、受託側メーカーに対して、製品の設計資料や生産するための組立マニュアルに至るまで各種情報の提供を行います。
加えて、効率的な生産を行うためのノウハウの伝授や場合によっては従業員の指導に至るまでサポートするケースもあります。これら全ての行為が、委託側にとって、安くて良い製品を納品してもらうことにつながるからです。
従って、委託側の技術力や製品力が受託側に比べて圧倒的に勝っているのが一般的です。
ODM(Original Design Manufacturing)とは他社ブランドのオリジナル製品の設計および生産を行うことです。取引先製品の生産に加えて設計まで行う点が異なります。場合によっては、設計の更に上流工程である製品のマーケティングから製品企画に至るまで受託側メーカーで行うケースもあります。
従って、ODMの場合受託メーカーの技術力や製品力は委託側と同等、もしくはそれ以上のケースが一般的です。
委託側から受託メーカーに対して、まずはOEMのスタイルでビジネスが開始されます。生産の委託を行っていく中で、受託側メーカーのにおける従業員のスキルが向上し、生産効率が上がり設計力などもついていくに従い、受託側メーカーはODMへとビジネススタイルを進化させていくケースもあります。
委託製造のメリット・デメリットとは?
製造委託する場合のメリットとデメリットを紹介していきます。
委託製造のメリット
第一に期待できるのは、製品のコスト削減に伴う利益の拡大です。
一般的に日本国内で生産するのに比較して、アジア各国に存在する専門のメーカーに委託製造することで、安くて良質な労働力に支えられたアジア各国の専門のメーカーに生産を委託したほうが圧倒的に安く製品を手に入れることが期待できます。
大きなメーカーになると委託製造ではなく、海外の安い労働力のみを期待し自社で海外に工場を設置します。
生産の規模が大きく、投資した費用に対してしっかりとした回収計画が立てられるのであれば、自社で工場を立ち上げて現地の労働力を活用する方法もあります。しかし、ほとんどの場合、回収の計画を立てることは困難なため、OEMから開始するのが得策と考えられます。
次に考えられるのが、委託側の労働力の削減です。
労働力を削減可能と言うことは、結局のところ製品コストの削減につながる事です。
人を雇用するためには、単なる時間単価×労働時間の費用のみではなく付帯する各種経費を含めると大きな費用となるため、この費用の削減に伴い製品力アップにつながります。
また、OEMによって不要となった労働力を他の事業や業務に活用できる効果も期待できます。
委託製造のデメリット
第一に想定されるのは、委託製造の立ち上げ時期においては、大きなサポート力が必要です。
委託側メーカーで保有する各種設計ドキュメントや生産用の組立資料を渡せば、受託側メーカーでこれらを読み解き自立的に製品を生産して納品してくれるようなことは、まずありません。このようなことができるメーカーであれば、自社の製品を持ち、自社ブランドで販売をしているに違いないからです。
最初のうちは、密なコミュニケーションを通して指導を行い、受託メーカー側の全ての担当者に自社の製品をしっかりと理解してもらわなければなりません。それなりのウォーミングアップ期間を覚悟しておかなければなりません。
次に考えられるのは、製品の品質の低下に対する懸念です。
受託側メーカーと密にコミュニケーションを取り合って、自社の製品に対するポリシーを理解してもらうべく指導を行っても、国が違うと国民性が違い、しっかりとマニュアル通りに業務を進めることができずに、それが製品の出来に結び付き、結果として低品質な製品となってしまうことも少なくありません。
委託製造の注意点
「自社で通用している常識は全く通用しない」という前提で委託製造を行う必要があります。委託製造契約書において、委託する製品とその数量、納期、コスト、求める品質、ペナルティなどについて具体的に明記することが求められます。
①製造スケジュールの把握
まず、納品してもらう製品のスケジュールを設定します。例えば、毎月月末毎の数量×N回で最終的にいつまでにどれだけの数量を納品してもらうか取り決めます。また、この約束に対して遅れが発生した場合には、製品販売機会のロスにつながるわけですから、遅延日数に応じたペナルティの設定を行うなどにより、日程遅延の抑止につなげます。
②コストを最大限抑える
いかなる製品においても生産する数量が増えればそれに応じて、1台当たりの生産コストは削減できます。
これは、製品に使われる個々の部品の単価が安くなることや、製造する人のスキル上昇による作成時間の短縮、生産設備の償却など、様々な要因があるためです。
以上のようなことを認識した上で、受託メーカーとコストダウン交渉を行い、場合によっては、その結果を製造委託契約書の中に明記すると効果的です。
例えば〇〇台までは1台当たり〇〇円、〇〇台~△△台までに増えると1台当たり△△円のように、ステップをつけて、単価を安くする交渉を行います。
③「OEM=下請け」扱いしない
委託側は対価だけではなく、自社で保有する設計や生産のノウハウに加え、従業員を教育するノウハウなど、様々な情報を提供し受託メーカー側の発展に寄与する必要があります。他方で、受託側メーカーは委託側からの様々なサポートを受け、技術力や生産力、従業員のスキルの向上につなげ、高品質で安い製品の提供を持って応えていきます。
一言で言えば、両社は「WinWin」の関係を継続していくことが本来期待される委託製造の形と考えられます。
委託製造は今後どうなる?
まず最初に考えられるのは、一方的な製造の委託ではなく、相互に補完しあえる関係に発展していくのでないか、ということです。別の言い方をすれば、水平分業のスタイルがOEMの発展形と考えられます。メーカーそれぞれによって、得意とする製品や部品を分担して製品に仕上げていくというスタイルです。
また、製品の企画、設計、製造など製品開発の着手から製品販売のプロセスで得意な分野を手分けし、最終的に製品にまとめ上げていくというスタイルも考えられます。
いずれのスタイルの場合にも、OEMやODM先は自社のビジネスパートナーとして、対等な関係を保っていくことが、結果的に自社のビジネスの成功に結び付いていくものと認識して対応していくべきでしょう。
委託製造|まとめ
委託製造は、効率的にコスト力のある自社の製品を作り上げるための効果的な手段の1つと考えられます。
委託側メーカーにおいては、自社のコアコンピタンスをどこに持つのか企業戦略を立てた上で委託製造やODMを活用することにより、強い筋力を持つビジネスを展開していくことが求められるのではないでしょうか。