ECを持つことで、ショップやモールに頼ることなく、自らで販売が可能になることから、特にアパレル事業者が自らECサイトを持ち、直接販売するケースが増えています。
例えば近年広がりを見せているD2Cも基本的にはECサイトを用いた手法ですし、自社でECサイトを運営することで販売店や他社ECモールのルールに縛られることなく、自社独自の、理想の販売が可能です。
そこでアパレルECを始めるための方法や、既にアパレルECで成功している企業などをご紹介しましょう。
目次
アパレルEC市場の市場規模について
アパレルECの市場規模ですが、下記となっています。
2014年:1兆2,822億円
2015年:1兆3,839億円
2016年:1兆5,297億円
2017年:1兆6,454億円
2018年:1兆7,728億円
2019年:1兆9,100億円
2020年:2兆2,203億円
このように、2014年の時点で既に巨大市場が形成されていたにも関わらず、以降も順調に成長を遂げています。
さらに注目すべきはEC化率です。
アパレル業界がどれだけECを導入しているかを示した数値は下記となっています。
2014年:8.11%
2015年:9.04%
2016年:10.93%
2017年:11.54%
2018年:12.96%
2019年:13.87%
2020年:19.44%
2020年は世界的にコロナ感染が拡大した時期なので、様々な産業にてIT化が促進されたことで過去にない伸び率を示しています。
この数値から分かるのは、2014年はECサイトは総売上の10分の1に満たなかったものの、2020年には売上のおよそ2割を占めるに至っていることを意味します。アパレル店は全国に店舗がありますが、業界全体の売上の5分の1はECサイトなのです。
コロナ感染症拡大により、打撃を受けた産業も多い一方で、アパレルECに関してはIT化やDX化の波を受け、更なる成長を遂げていることが分かるのではないでしょうか。
そのため、今後アパレル事業者にとってECは「あると有利になる」ではなく「なければ不利になる」システムだと考えてよいでしょう。
アパレルECで成功している各社を徹底比較!
アパレルECが大きな成長を遂げ、注目を集めている背景に、実際にECにて成功している大手アパレル事業者の存在が挙げられます。
成功のモデルケースがあること、さらにはアパレルECに大きな需要があることが分かったからこそ、多くのアパレル事業者が「次は自分たちが」と意気込んでいます。
そこで、アパレルECで大きな成功を収めたアパレル事業者をいくつかご紹介しましょう。
ZOZOTOWN
「アパレルEC」という市場を開拓した、第一人者がZOZOTOWNです。
ZOZOTOWNは、元々は輸入CD等の販売を手掛けていたのですが、2000年よりアパレルの通信販売事業を開始すると、2004年にZOZOTOWNを解説。その後はCD販売部門を切り離し、アパレルECとして成長を遂げます。
当時、アパレルはECでの成功が難しい時代と囁かれていました。
通販でもアパレルは売上が乏しかったことから、Webの力を活用しても難しいとされていました。
しかしZOZOTOWNはそれまで難しいとされていた通信販売での試着を実践するなど、web環境を武器にそれまでのアパレル業界にはない様々な施策を打ち出すことで、アパレルECの第一人者としての地位を確立しました。
2007年に東京証券マザーズに上場すると、その後も様々な施策を打ち出し、さらには自社ブランドまで設立するなどもはやECアパレルという枠を越え、IT時代の寵児として様々なメディアからも注目を集めています。
ユニクロ
ユニクロといえば後に提唱される「ファストファッション」をいち早く掲げ、衣料品を身近な存在にしたアパレル事業者です。
それまで衣料品店に足を運んだことがなかった層も、ユニクロで衣料品を購入するなどアパレル事業者の革命児的存在でした。
そのユニクロもECを展開しています。
実はECサイトの立ち上げそのものは比較的早く、2002年には既にWEB上にて特別サイズの商品を販売していました。しかし当時はまだまだ店舗での販売がユニクロの販売戦略の要となっていました。
しかしスマートフォンの普及に伴い、EC市場が注目を集めるようになると利益が急拡大。
2012年にはおよそ200億円だったECの売上が2019年には832億円へと成長しました。
この背景にあるのは実店舗の存在とユニクロの信頼感です。
既にユニクロは、大きな知名度を得ていました。また、全国各地に店舗があることから、店舗で実物を見ることが可能です。
結果、店舗から家まで商品を持ち帰るのが面倒な人から、店舗に頻繁に足を運べない人、かねてからのユニクロのリピーターなどがユニクロのECサイトを利用することとなり、大きな成長を遂げました。
アダストリア
アダストリアという名前にピンと来ない方も多いかもしれませんが「.st(ドットエスティ)」を運営している会社だと聞けば馴染みが出てくる方も多いことでしょう。
自社ECサイトが絶好調で、2021年2月期はEC化率30.6%を達成するなどECサイトが好調を記録しているアパレル事業者です。
アダストリアはHARE、PAGEBOY、LAKOLE、Eluraなど30以上の様々なブランドを展開しているアパレル事業者で、大型ショッピングモールに出店するなど、実店舗展開も積極的に行っています。
一方で、時代の機微を見極め、ECサイトにも力を入れ始めています。
特に肝となったのは、自社で展開していた多くのブランドをまとめた点です。
ECサイトにて、同一事業者のブランドだと知った人もいるかもしれません。
様々なブランドが集合することで見応え・選択肢のあるECサイトとなったことで成長し、国内アパレルECを代表するアパレル事業者の一つに数えられています。
アパレルECを始めるには?6STEPで解説
アパレルECは大きな可能性を秘めているシステムであると共に、ECサイトの構築・運営が決して高いハードルではない点も特徴です。
資金力に余裕のある一部のアパレル事業者だけが可能な手法ではなく、予算に限りがある事業者であっても、比較的簡単に展開できるものです。
しかしECサイトを出店すれば売れると約束されている訳ではありません。
ECサイトもまた、販売路の一つであり、いくつか設定しておくべき点があることも覚えておく必要があります。
そこで、アパレルECを始めるにあたっての流れを大きく6つの項目に分けて解説していきましょう。
STEP1:販売形態を考える
まずは販売形態を考えましょう。
ECサイトを活用しての販売が大前提ですが、自社でブランドを立ち上げるのか、あるいは仕入れるのか、店舗を併売するのか、ECサイトのみなのかなど、販売形態の選択肢は豊富です。
この点に関しては正解を見つけるのではなく、自社の業態・状態に合わせた選択肢が大切です。
例えば店舗にて営業しているものの、売上が伸び悩んでいるのでECサイトをと考えているのであれば基本的には店舗との併売になるでしょう。
これからECを通してアパレル事業に進出をと考えているのであれば店舗を持つのか、それともECのみで展開するのか、ECサイトはどのような位置付けなのかを考えなければなりません。
このように、まずは自社の状況や理想等に応じた販売形態を考えましょう。
STEP2:ブランドのコンセプトを決める
ブランドコンセプトの選定も重要です。
「とにかく物を売る」では、既に多くのアパレルECが登場していますので、残念ながら消費者にはなかなか届かないことでしょう。
ブランドコンセプトはいわば自社の個性になる部分で、こちらも販売形態同様、正解か間違いかで考えるのではなく、消費者に何を訴求したいのかを考えましょう。
現実的にできること、理想等、様々な視点から考える必要がありますが、途中でブランドコンセプトを変更すると、掴んでいた固定客を手放しかねません。また、頻繁にブランドコンセプトを変更すると、消費者からの信頼を得ることが難しいです。
後から気軽に変更できるものではありませんので、ブランドコンセプトはよく考えましょう。ブランドコンセプトは消費者へのアピールだけではなく、自社の経営・活動方針に直結する部分なので、安易に考えたり、行き当たりばったりで決めることは控えましょう。
STEP3.必要な許認可の確認
アパレルECの場合、基本的に販売に必要な認可はありません。
但し、アパレル以外の品目の取り扱いも検討している場合には認可が必要なものもがあります。
例えばアパレルと化粧品もと考えた場合、化粧品製造販売許可を厚生労働省に申請しなければなりません。
また、買取も行うなど中古の扱いも考慮している場合には所轄警察署に古物商の許可を得なければなりません。
STEP4.商品を準備する
ある程度の方向性が定まったら商品を準備しましょう。
ECサイトの目的は商品を売るためですが、数量に関してはコンセプトによって異なります。
例えばファストファッションであれば当初からある程度の数量を用意しておいた方が良いでしょう。売り切れは販売機会の損失になりますが、ファストファッション等、量にて利益をと考えている場合、売り切れは痛手です。
一方、量より質でと考えているのであれば数量はさほど必要ありませんし、売り切れが購買意欲をそそるケースもありますので、ブランドコンセプトに合わせて商品を用意しておきましょう。
STEP5.ショップの出店方法を決める
ECサイトの出店方法もまた、いくつかの選択肢があります。
大きな選択肢として自社にてECサイトを構築するのか、あるいは既存のECモールに出店するのかですが、それぞれメリット・デメリットがありますので、特徴を把握し、自社のブランドコンセプトに合致した出店方法が重要です。
例えば自社にてECサイトを持つ場合、完全に自社でゼロから作るのか、あるいはASPを利用するのかといった選択肢がありますし、ECモールへの出店の場合、どのECモールにするのか等、様々な選択肢が用意されていますので、こちらも決めておく必要があります。
ただしこの点に関しては、後からある程度変更できる部分なので、ブランドコンセプト程煮詰める必要はありません。
STEP6:商品をショップに登録して開業
販売したい商品をショップに登録することで、閲覧者・訪問者が商品購入可能になります。
登録そのものは出展方法、あるいは販売形態によって異なりますので確認しておきましょう。
その際、慎重にチェックしておきましょう。なぜならここでのミスはアパレルEC運営の致命傷になりかねません。値段が違う、表記が異なるといったミスで消費者の信頼を損ねてしまった場合、二度と自社のECサイトを利用してもらえることはないでしょう。
急いで登録するのではなく、正確な情報の記載による登録を徹底しましょう。
まとめ
アパレルECについて、成功しているアパレル事業者やアパレルECを開始するにあたって必要な流れ等を解説させていただきました。
アパレルEC市場が大きな成長を見せているのは、それだけ多くのアパレル事業者がECに進出していることを意味していますので、ECサイトも、ただ単に出店するだけではなく、戦略を練った上での出店が求められます。
一方、消費者にとってもアパレル製品をECショップにて購入することが当たり前となりつつありますので、消費者のニーズに応えることで、大きな成果を手にできる可能性も秘めています。