EC市場は、もはや多くの消費者にとって特別なものではなく、日常生活に溶け込んだ、ごく普通の取引形態となっていると考えてよいでしょう。
インターネットが登場して間もないころは、セキュリティ技術への不安や、まだまだインターネット環境が一部の人間のものであったことから、EC市場はいわば「一部で盛り上がっているもの」程度でした。
しかしインターネットが普及すると、EC市場は多くの人にとって身近で当たり前のものとなり、急成長しています。
そこでEC市場について、市場規模や推移、成長率、さらには国内の主要ECモールやECサイトをご紹介します。
目次
EC市場とは?
EC市場とは、Electronic Commerce市場の略称で、いわばインターネット上の商取引市場です。
EC市場はスマートフォンの普及に比例するかのように成長しているとされています。スマートフォン登場前は、インターネットはPCからのアクセスが一般的でした。
ガラケーからもアクセスは可能でしたが、性能等の問題からPCと同じ画面を表示するのではなく、簡易版が表示されていました。
つまり、PCユーザーとガラケーユーザーとでは、同じサイトではあってもサイトの型式が異なるものでした。
そしてインターネット上のサービスは、PCユーザー向けの物が多かったことから、「誰もが当たり前のように使う」ではなく、一部のユーザー向けのものが多かったのです。
しかし、スマートフォンの登場によって状況が変わりました。
スマートフォンは大きさこそガラケーと大した違いはありませんが、性能に関してはPCに迫るもので、PCと同じサイトの閲覧が可能になりました。
結果、サイト運営者はPCとスマホユーザーを区別する必要がなくなり、多くのユーザーを対象とすることになりました。
さらにはセキュリティ技術の高まりもあり、インターネット上でのショッピングが当たり前のものとなり、多くの人が利用することで成長を遂げました。
スマートフォンに電子マネーやクレジットカード登録を行っておくことで、気軽に様々な商品を購入できる点や、営業時間にとらわれずに24時間利用できる点、足を運ぶのではなく、あくまでもインターネット上での買い物になりますので天候や立地も関係ない点などから、地域を問わずに多くの消費者が利用するに至っています。
このような需要の増加を受け、様々な企業がEC市場に参入し、EC市場の成長が加速しています。
日本国内におけるECの市場規模、推移、成長率について
EC市場は日本だけではなく、世界的に成長していますが、ここでは主に日本のEC市場について、様々なデータから見てみるとしましょう。
市場規模
まずは日本国内のEC市場の規模です。2020年はおよそ19兆円市場とされています。大きな市場を形成していることは分かっていただけるかと思いますが、他の市場と比較すると、EC市場の大きさが顕著です。
新築一戸建て市場:4兆円
スポーツマーケティング市場:1兆910億円
映画市場(2020年):1,432億円
これらの数字からも、EC市場が如何に巨大市場を形成しているかが分かるのではないでしょうか。
これだけ大きな市場を形成している背景にあるのは、やはり多くの消費者が利用している点に尽きます。
一部の人間だけが利用しているのではなく、老若男女を問わず、幅広い消費者がインターネット上にてショッピング等を当たり前のように行っていますので、自ずと大きな市場となっているのです。
推移
EC市場の推移も見てみるとしましょう。
先に2020年のEC市場はおよそ19兆円市場だとお伝えしましたが、過去のデータは下記となっています。
2019年:19兆円
2018年:17兆9000億円
2017年:16兆5000億円
2016年:15兆円
2015年:13兆7000億円
2014年:12兆7000億円
2013年:11兆1000億円
この数字からも分かるように、年々市場規模を拡大させていることが分かります。
ちなみにこちらの数字はBtoCのものになりますので、BtoBを合わせると、さらに大きな市場となる可能性があります。
成長率
EC市場の成長率ですが、先の数字からも分かるように、2013年から、毎年およそ10%ほど伸びています。
2019年から2020年にかけてはコロナ等の影響もあるなど、社会情勢から一時的に横ばいとなりましたが、それでも年々成長していることが分かります。
特筆すべきは、巨大市場でありながら成長を遂げている点にあります。
先にもお伝えしたように、スポーツマーケティングや映画といった娯楽産業よりもはるかに大きな市場を形成しているにも関わらず、未だに成長を遂げています。
また、コロナ禍によって巣ごもり需要等も増えた点や、新しい生活様式等を見据えてさらなる成長も見込まれています。
国内のEC市場の売り上げランキング
国内EC市場の売上ランキングも見てみるとしましょう。
EC市場も様々ですが、ここではECモール、ECサイトそれぞれの売上ランキングの上位3社をご紹介します。
国内ECモールの売り上げランキング
1位:楽天
国内EC市場に於けるECモールの売上ランキング1位は楽天です。
日本国内大手EC事業者である楽天は、ECサイト以外にも様々な事業を展開しているグループ企業ですが、IT事業を通して急成長を遂げた、IT時代を代表する企業です。
楽天モールの強みは、店舗数やバラエティー豊かな取扱商品もさることながら、楽天ポイントとの連携です。楽天ポイント還元イベント等を積極的に展開することで、消費意欲を喚起し、利用者に訴求します。
ちなみに楽天の2020年のEC流通総額は4兆4510億円とのことで、国内EC市場におけるおよそ2割を占めていることになります。特定のECサイトが強いということではなく、様々なショップを展開するなど、いわば「数」で圧倒しているのが楽天です。
2位:Amazonジャパン
国内2位のECモールはAmazonジャパンです。
Amazonは日本ではなく、アメリカの会社で、日米だけではなく、世界中でサービスを展開しています。楽天同様、IT時代の波に乗り、事業を拡大した企業で、近年はショッピングサイトとしてだけではなく、総合エンターテイメントコンテンツの企業へと成長しつつあります。
Amazonの強みはやはりその利便性です。
専用アプリを用意し、クレジットカードを登録しておくことで気軽にショッピングが可能な点に加え、利用者が多いからこそ、出展者が増える。出展者が多いから利用者も増える好循環が生まれています。
ちなみにAmazonが公表している年次報告書によると、2020年の日本国内の売上は204億ドル。さらに他のサービスを加算すると、およそ4兆円程度の市場規模なのではないかと推測されています。
3位:Yahoo!ショッピング
国内ECモールの3位はYahoo!ショッピングです。
Yahoo!もまた、楽天やAmazon同様、IT時代の波に乗って成長した企業で、ショッピングだけではなく様々な事業を展開しています。
特にYahoo!ニュースに取り上げられると、一気にアクセスが増えることからも分かるように、注目度の高いサイトです。
Yahoo!を経営するZホールディングの決算説明会史料によると、2020年の売上はおよそ1兆4,180億円とのことです。
つまり、上位3社でおよそ10兆円と、日本のEC市場の取扱高の半分を占めることになります。
国内ECサイトの売り上げランキング
1位:Amazonジャパン
ECサイトのランキングもご紹介しましょう。
1位はECモールで2位にランクインしたAmazonジャパンです。
ECサイト単体でとなると、Amazonジャパンが1位となるのは、楽天は様々な出店者のいるモールとしてカウントされていますが、Amazonジャパンの場合、モールもあればECサイトも用意されていることから、両者でランクインとなりました。
AmazonジャパンがECサイトでも強みを見せているのは、やはりその知名度です。
ECモール部門でもランクインしたように、Amazonは様々なサービスを展開していることから、サービスを跨るものが珍しくありません。
例えばAmazonは音楽や映画など、エンターテイメント事業も手掛けていますが、見聞きしている関連商品のサイトやモールのリンクを表示させるなど、消費者に商品購入機会を提示し、消費意欲を刺激します。
当初は購入するつもりはなかったものの、気付いたらAmazonで商品を購入していた。このような経験をお持ちの方も多いことでしょう。それだけ、サービスそのものに厚みがあるのがAmazonの強みです。
2位:ヨドバシカメラ
ヨドバシカメラといえばかつては家電量販店でした。
しかし昨今は、ECサイトの成功により、ECサイトとしての知名度も高まっているのではないでしょうか。
家電以外の商品をヨドバシカメラのECサイトにて購入している消費者も多いことでしょう。
家電量販店のヨドバシカメラのECサイトが大きな人気を集めているのは、価格や品ぞろえ、ヨドバシポイントとの連携もさることながら、流通網に力を入れている点です。
例えばその日のうちに商品を届けるサービス等、注文してから手元に届くまで時間がかかるECサイトの弱点にメスを入れ、スピード感を売りにしたサービスを展開することで、日本を代表するECサイトへと成長しました。
また、実店舗を保有しているものの、「ECサイトで購入するためだけでも良い」と、従来の店舗を「展示場」的に活用するアナウンスも行うなど、既存の店舗での販売にこだわる業者とは一線を画した、時代のニーズに合わせた事業展開が支持を集めています。
3位:ZOZO
前社長が有名なZOZOは、アパレルとECサイトを結んだ革命児です。
かつて、ECサイトではアパレルは当たらないと囁かれていました。なぜなら、アパレルは実際に着てみないと分からない点が多いからです。
サイズはもちろんですが、消費者のフィーリングやファッションの系統とのマッチングなど、スマートフォンのモニター越しでは判断できない点が多いことから、ECサイトとアパレルは親和性が低いと囁かれていました。そこでZOZOはECサイトでありながら「試着」を実践。
合わなければ返品OKと打ち出したことで、気軽に購入する消費者が増え、日本を代表するECサイトへと成長しました。
まとめ
EC市場について様々な角度からご紹介しました。
成長している市場であり、かつ様々な企業が進出しているのも、それだけ多くの利用者がいるからこそ。
特にコロナ禍もあり、外出しての買い物に制限がかかってしまったことからも、今度もEC市場の需要はより大きなものになることが予想されています。
つまり、今後何らかのビジネスの展開を考えているのであれば、EC市場を無視することはできないということです。