新規事業に乗り出すことは、現状打破、将来を見据えてなど様々な目的があるかと思いますが、必ずしも成功が保証されているものではありません。
例え大企業ではあっても、ネームバリューだけに頼った新規事業は成功することはないでしょう。新規事業は開発を含め、市場のニーズに応えられるのかがポイントです。
そこで新規事業開発を成功させるためのロジックについて解説していきましょう。
目次
新規事業開発をする前に知っておきたい市場に求められていること
新規事業開発を考えるのであれば、市場ニーズの把握が重要です。
自社で取り組みたいことがあるとしても、市場ニーズがなければ成功する可能性は低いです。
新規事業開発の際、それまでに培ったノウハウやインフラなど、自社の強みを活かせないものかと考えるのは決して間違いではありません。しかし、ただ単に自社の強みを活かすだけではなく、自社の強みを市場のニーズに対してどのように活かすのかこそ、新規事業開発の成否を左右するものです。
その鍵を握るのがイノベーションと新しい価値提供です。
未来まで顧客に愛される「イノベーション」
イノベーションとは技術革新を意味するものです。
それまでの技術に頼る新規事業ではなく、それまでの技術を基にした技術革新によって新しい商品やサービスを提供することです。
この一例としてはかつてのハイブリッドカーが該当します。
あくまでも車ではありますが、それまでのガソリン車とは少々異なるものです。しかし、それまでのガソリン車で培った技術がなければ開発することはできなかったことでしょう。
実際、日本の自動車メーカーはハイブリッドカーにて世界の自動車産業を席捲しました。それまでのガソリン車に、電気の力を上手く掛け合わせることで燃費改善をもたらす一方で、決してガソリン車から大幅に変わることのない運転感や燃料補給。ユーザーは、それまでのガソリン車同様の使い勝手で、新しい技術が搭載された車を楽しめました。
まさにイノベーションを代表する事例だと考えてよいでしょう。
ハイブリッドカーは登場から20年以上が経過しても尚、日本の道路を走っていますし、新しいモデルが登場するなど長く愛されています。
求められるのは「新しい価値提供」
新しい価値を提供することもまた、新規事業開発の成功のポイントです。
これまでにはない価値観ではあっても、潜在的なニーズに応えたり、あるいはその利便性から新たなニーズや市場を形成することで、成功するケースです。
この最たるものはスマートフォンです。
かつて我が国では、スマートフォンはあまり流行しないだろうと囁かれていました。なぜなら、それまでのガラケーが便利だったからです。
メールやwebブラウジング、さらにはカメラ機能が搭載されているなど利便性の高さは素晴らしいものでした。さらにはスマートフォンのようなタッチパネル式のガラケーがあまり人気を集めなかったこともあり、スマートフォンに関して冷ややかな視線が向けられていました。
しかしです。
スマートフォンはもはや説明不要なほど、我々の生活に欠かせないものとなっており、様々なサービスがスマートフォンに集約されるようになりました。
タッチパネル、さらにはIT環境の進化により、ガラケーではできなかった様々なサービスがスマートフォンで行えるようになるなど、新しい価値が提供され続けており、より高い利便性をもたらすだけではなく、新しい価値が新しいニーズを生み、そのニーズに応えるためのサービスが登場するという、素晴らしい成長循環を見せています。
このように、ユーザーの潜在的なニーズに訴えかける新しい価値提供もまた、新規事業開発成功のポイントです。
新規事業開発を成功に導く手法2選をご紹介
新規事業開発を成功に導くためにはイノベーションと新しい価値提供が必要です。では具体的に、それらを創造するために何が求められるのかを模索する必要があります。
そこで、注目を集めているのがリーン・スタートアップとオープンイノベーションの二つの手法です。それぞれについて、解説していきましょう。
新規事業開発における定番手法の「リーン・スタートアップ」
リーン・スタートアップとは、あまりコストをかけずに製品やサービスの試作品を作り、顧客の反応を得て改良を繰り返す手法です。
本来、新製品を生むためには時間をかけ、調査や内部での開発等試行錯誤を繰り返す必要がありました。
しかしこのような多くの企業における新規事業開発や新製品開発のスタンダードなスタイルの場合、時間がかかるので事業の立ち上げ時と商品・サービス提供時に流行や価値観が変遷しており、思うような成功を得られないケースが珍しくありません。
その点リーン・スタートアップは、最低限の機能やサービスを付与させるのみで、試作品をリリース。限定的な市場に投入して反応を見て改良する。この繰り返しにより、最低限のコストで市場のニーズをとらえた製品の開発を可能にします。
かつては試作品であってもそれなりのものをとの認識がありました。しかしリーン・スタートアップは、試作品にそこまで手間暇をかけるのではなく、利益よりもむしろリサーチ目的だと割り切り、最低限のアピールポイントを付帯させるのみで市場に出し、反応を伺うのです。
いわばキャッチ&リリースを連続で何度も行うことで、より良いものを生み出すことになります。
近年は流行のサイクルも短くなっていますが、リーン・スタートアップであれば市場の敏感なニーズに対応しやすい点もポイントです。
オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、会社や団体の垣根を超え様々な技術や価値観を持ち寄って新しいイノベーションを生むものです。
一般的に、新規事業開発だけではなく、新製品の開発は全て自社のみで行うものです。それまで自社にて蓄積したノウハウやデータ等を基に、他社よりも良いものを。
これが会社として標準的な姿勢でした。
しかしオープンイノベーションは会社の垣根を超えることで、一社だけでは思いつかないような製品・サービスの提供を行います。
様々な会社が集まることで、それぞれの会社の強みや知見を活かせます。
自社だけで取り組むよりも効率の良いケースもあれば、ヒットが業界で話題になるだけではなく、世間からの注目を集めるような大きなものになるケースもあります。
実際、近年オープンイノベーションは増加傾向にあります。自社だけで取り組むのではなく、それまでライバルだった会社、あるいはまったく関連していない事業者と手を取り、それまでの常識では考えられないような商品・サービスを生むことで大きなムーブメントを生み出すケースもあります。
新規事業開発を成功させるためのカギとは?
新規事業開発を成功させるためにはまだまだ必要なものがあります。
オープンイノベーションや大きな考え方もリーン・スタートアップといった大きな考え方も大切ですが、それだけでは新規事業開発は成功しません。
成功のためには、これから紹介する考え方も求められます。
ニーズを正しく理解している
まずは市場ニーズの把握ですが、表層的に理解するだけではなく、深層的なニーズまで正しく把握することが大切です。
例えばこんな話があります。
とあるメーカーへにドリルに対しての問い合わせがあったとのこと。担当者は自社のドリルを多々紹介したものの、お客からの反応はイマイチ。
そのことを上司に告げると、上司はその担当者に対し、「お客が本当に欲しかったのは何だと思う?」と問いかけます。
担当者は質の良いドリル、安いドリルなどと答えますが、上司の反応はイマイチ。そんな上司の答えは「お客は穴を開けたかったんだ。その方法としてドリルを問い合わせただけだ」と見破ったのです。
この話からも、お客が本当は何を求めているのかを見極めることが大切だと気付くのではないでしょうか。
先の話でいえば、お客は穴を開けられるものを探していたのです。そこで、とりあえずドリルを問い合わせたところ、担当者はその表層的なニーズに固執し、ドリルばかりを提案していました。
しかしお客はドリルが欲しいのではなく、「穴を開けられるもの」を欲していたのです。
このような、潜在的なニーズを正しく理解することこそ、新規事業開発に求められます。
正確な意思決定をしている
会社内の意思決定も大切です。
どれだけ熱意があっても、意思決定ができなければ話は進みません。新規事業開発で手応えがあっても、意思決定に携わる人間が首を縦に振らなければ話は進みません。
これまで紹介した様々な手順を踏んだとしても、最後の最後で上司が製品化に対して「NO」を突き付けてしまっては元も子もありません。
もちろん会社組織としての意思決定機関は無視できるものではありませんが、新規事業開発に対しての理解が薄い人間が意思決定に携わっている場合、なかなか話が進みません。
適切なプロ人材の協力を得る
新規事業開発を成功させるためには、質の高いスタッフの確保も重要です。
自社に質の高いスタッフが多々いる会社であれば良いでしょう。しかし、なかなか自社だけで質の高いスタッフを用意できない場合、プロ人材を頼るのも手です。
この点はオープンイノベーションにも相通ずる部分ですが、新規事業開発を成功させたいのであれば、「自社だけで」というこだわりを持つ必要はないはずです。
成功のために必要な人材が内部にいないのであれば、外部を頼る。極々当たり前のことです。
最新の成功事例をご紹介
実際に新規事業開発に成功した事例として、ホンダ・ジェットについてご紹介しましょう。
ホンダの「ホンダジェット」
ホンダと言えば日本だけではなく、世界的にも有名な自動車メーカーです。そんなホンダが航空機を手掛けるプロジェクトを開始したのは、なんと1986年。
当時国内は経済成長の真っ只中だったこともあり、挑戦しやすい環境だったのでしょう。決して自動車産業で苦戦していた訳ではなく、余力があるからこそ可能だったチャレンジですが、水面下での様々な実験を経て2006年に航空機市場への参入を表明。
そして2015年、アメリカ連邦降雨局より形式証明を取得し、2017年から2019年には小型ジェット機カテゴリーにて3年連続のデリバリー数を達成するなど、新規事業開発成功と評価できる実績を残しました。
まとめ
新規事業開発を成功させるためには意識しなければならない点が多々あります。
しかし、決して不可能ではありません。
むしろ新規事業開発に成功することで、より大きなビジネスチャンスを手にすることができます。
既存事業が利益が頭打ちとなっている企業や、より大きな利益を狙いたい企業、あるいは利益よりも成功を得ることで自社の存在を大いにアピールしたい企業は、新規事業開発に力を入れてみてはいかがでしょうか。