企業が取るべきビジネス戦略は多々ありますが、ブランディング戦略もその一つです。ブランディング戦略に成功した企業が増えていることから知名度が高まりつつある手法で、ブランディング戦略に成功することで利益を増やすだけではなく、自社のイメージアップも獲得できます。そこでブランディング戦略とは何を意味するものなのかや、成功事例、具体的方法等についてを解説していきましょう。
目次
ブランディング戦略とは?
ブランディング戦略とは、イメージ戦略と考えると分かりやすいですが、イメージ戦略よりも具体性のあるものです。自社が消費者にどのように思われたいのか、どのようなイメージを与えたいのかを言葉で説明するのではなく、商品・サービス等、言葉以外の面でアピールすることです。例えば高級感のあるブランドだとアピールしたいのであれば、「私たちは高級感を売りにしています」と言葉でアピールするのではなく、商品・サービスにて高級感をアピールします。素材にこだわったり、細かい部分にこだわったりなど、消費者が商品・サービスを見て高級感や上質感など、特別だと感じるようラインナップします。ここでポイントとなるのが、一つの商品・サービスだけに行うのではなく、自社で取り扱う商品・サービス全てに共通させることです。全ての商品に共通している点こそ、消費者が企業のイメージとして認識する部分です。ただし、ここでポイントとなるのが、あくまでもイメージを持つのは消費者です。企業側が「このようなイメージを与えたい」と思っても、商品やサービス、あるいはその付随するコンテンツ等にてイメージを決定するのは消費者になりますので、細かい部分まで意識することこそ、ブランディング戦略の肝です。例えば先に高級感の話をしましたが、高級感を与えたいのであれば、言葉遣い、店頭であればスタッフの応対等も消費者から見られています。がさつで、かつたたずまいもどこか落ち着きのないスタッフがいるお店に高級感を抱く消費者はいません。消費者に触れる部分を、与えたいイメージにて統一することこそ、ブランディング戦略になります。
ブランディング戦略の成功事例をご紹介
ブランディング戦略をと考えているのであれば、ブランディング戦略に成功した企業の事例のチェックも欠かせません。成功事例を見ることで、具体的に何をすべきなのかも見えてくることでしょう。そこでブランディングに成功した企業を3社ほどご紹介します。
「Apple」
日本人にとって生活必需品と言っても過言ではないiPhone。そのiPhoneを生産・販売しているのがAppleです。もはや「Apple」という会社名よりもiPhoneという商品名の方が知名度が高いほど、iPhoneの普及は目覚ましいものがあります。そもそも、日本でこれだけスマートフォンが普及したのはiPhoneの功績が大きいです。ガラケーの完成度の高さは国際的にも突出していました。そのため、世界でスマートフォンが登場しても、日本国内ではさほど反応は良くありませんでした。実際「スマホは流行らない」と断言していた経済評論家やジャーナリストもいましたが、iPhoneの登場によって事態は一変。多くの人がiPhoneを持つようになりました。しかし、冷静に考えるとiPhoneは高額です。それでも多くの方がiPhoneを求めるのは、「高い。でも品質が良い」というブランディング戦略に成功しているからこそです。Androidを使用しているよりも、iPhoneを使っている方がお洒落。先鋭的。好奇心旺盛。このようなブランディング戦略に成功したことで、高額ではあっても売れ行きは好調を記録し、新しいiPhoneが登場する度にニュースになるほど。このようなブランディング戦略に成功した理由に、iPhoneやiPadにて、常に新しい技術にチャレンジしている点、さらには完成度の高さが挙げられます。実際、Appleが採用することで後追い的に多くの企業が同じような商品、技術を導入することも珍しくありません。結果、Appleには常に動向をチェックする熱狂的なファンまで登場するなど、ブランディング戦略に成功した企業の一つとなりました。
「無印良品」
無印良品といえばかつてはノンブランドという点がブランドイメージでした。しかし、ブランディング戦略を見直し、ノンブランドではあるものの、お手頃価格でありながら品質の良いものを供給する企業としてのブランディングに成功しています。無印良品の商品は、決して物凄く高い訳ではありませんが、決して物凄く安い訳ではありません。つまり、価格帯としては標準なのですが「機能性が高い」「便利」「値段の割には質が良い」など、コストパフォーマンスの高い商品として定着しています。また、価格面以上に個性や利便性などを追求。結果、「価格以上の価値のあるブランド」として広く認知されるに至っています。
「星野リゾート」
1914年開業と老舗旅館である星野リゾートもブランディング戦略に成功した企業の一つです。星野リゾートは、単に旅館を経営しているだけではなく、コンセプトから設計しました。ラグジュアリーな和を売りにした「星のや」、地域に根付いた上質な温泉旅館「界」、そして洗練されたデザインやアクティビティを売りにした「リゾナーレ」の3つのコンセプトに基づき、旅館を経営しています。また、コンセプトに関しては本社が決めて現場に押し付けるのではなく、現場で決め、実践する形式となっています。つまり、現場に裁量権を委ねることで、現場のモチベーションアップをもたらしました。結果、コンセプトに沿った経営を現場の人間が実践することで、星野リゾートのブランディング戦略に寄与します。それまで旅館経営といえば、「お客様は神様」的な、来てくれた人間をもてなすというスタイルでした。もちろんこの点は星野リゾートとて同じではありますが、星野リゾートではコンセプトを明確にすることで、ターゲットもある程度選別しています。例えば「星のや」では客室にテレビがありません。客室にテレビがない旅館など、常識では考えられませんが、ラグジュアリー感をと考えたら、テレビは不要だと判断しました。そして、このようなコンセプトを理解したお客を相手にしていますので不満も出ません。これぞブランディング戦略の成功の賜物です。
ブランディング戦略の進め方は?
ブランディング戦略を実践するためにはいくつか意識すべきポイントもあれば、正しい進め方も重要です。そこでブランディング戦略を実践するための正しい流れについてを解説していきましょう。
ブランドの現状分析
まずは「己を知る」ことが大切です。ブランディング戦略をと考えた時、これからどうするのかも大切な部分ではありますが、現在どのようなイメージを抱かれているのかを把握することも大切です。なぜなら、新しいイメージを持ってもらうということは、現在のイメージを改善することを意味しています。正直、自社にとっては耳を閉ざしたくなるような声を聴くことにもなるでしょう。辛辣な意見だったり、認めたくない現実を受け入れなければならないこともあるかと思いますが、現状把握こそブランディング戦略の一歩目です。現状をより正確に把握することこそブランディング戦略の成功の鍵となりますので、都合の良い声ばかりを集めるのではなく、むしろ都合の悪い現実があればあるほど、改善すべきポイントが多々あることを意味しますし、改善してこそブランディング戦略が成功しますので、都合の悪い現実もしっかりと受け入れることが大切です。
ブランドコンセプトの設計
現状分析の後は、具体的にどのようなブランディング戦略を行うのか、ブランドコンセプトを設計します。ここではある程度大まかなものでも問題ありません。むしろここでは様々な意見が出た方が検討する項目が増えます。出された意見を頭ごなしに否定するのではなく、出てきた意見を様々な角度から検討してみましょう。ブランドコンセプトは、いわばブランディング戦略のゴール(目標)です。利益額ではなく、「消費者に与えたいイメージ」を決めるものです。自社の現状を踏まえ、どのようなイメージを与えたいのかを考える段階です。
コンセプトの具体化
ブランドコンセプトの設計の次はコンセプトを具体化します。コンセプト設計までは、いわば理想を追うものですが、コンセプトの具体化は現実的な手法になりますので、ブランディング戦略の肝となる部分です。例えば高級感をブランディングするのであれば、具体的に何をすれば高級感を与えることができるのかを考えます。店舗やサイトのデザイン、店舗スタッフの衣装、言葉使いといった細かい部分までを話し合うことになる大切な部分です。ブランドコンセプトの設計に関しては、ある程度理想を交えても良いのですが、コンセプトを具体化するにあたっては、現実的な視点が大切です。予算、リソース等を踏まえて考慮しなければならないのですが、あまりにも現実的すぎたり、あるいはチャレンジ精神を感じさせないものだと、結局は現状打破になりません。塩梅がとても難しい部分になりますが、ブランディング戦略を成功させるためには消費者との接点となる具体的施策の部分が重要になりますので、よく考えて実践してみましょう。
まとめ
ブランディング戦略に成功すると、消費者を選別できるので経営資源の集中が可能になります。想定されるイメージと消費者が抱くイメージが一致した時、大きな効果が期待できますが、そのためにはまずは己を知り、何をすべきかを考える必要があります。
決して自己満足で終わるのではなく、「消費者視線」を意識し、消費者に訴求できる具体的施策を実行し、ブランディング戦略を成功に導きましょう。